経営計画と業績グラフを見るに、ライザップグループは高い数値目標に向かって実績を示し続けている企業です。
この記事では経営計画の内容と業績グラフのポイントを見ていきます。
※ グラフは以下の決算分析システムとPDFの手入力を組み合わせて作りました。
やればできる!XBRLで決算分析システムを作るにあたって難しかったところ妥協したところ
ライザップグループ
事業内容
RIZAP(ライザップ)グループ株式会社は純粋持株会社です。実際の事業は子会社が行っています。
RIZAPグループの子会社はたくさんあり、大きく4つの領域に分けて展開しています。
- 美容・健康関連事業
- アパレル関連事業
- 住関連ライフスタイル事業
- エンターテイメント事業
最も有名なブランドはプライベートジムの「RIZAP(ライザップ)」ですね。顧客に専属のトレーナーがついて、結果が出るように指導するサービスを行っています。ジムのほかに、英語やゴルフのレッスンもRIZAPのブランドで行っています。
詳細は四半期ごとに開示している「決算説明会資料(アナリスト向け決算説明会資料)」がわかりやすく説明しています。
資料はRIZAPグループのウェブページから見られます。IR情報に決算説明会資料がまとまっています。
こまかいところですが、スライドの表紙が 2012年8月23日の決算説明会資料(2013年3月期 第1四半期 決算説明会)から華やかになりました。
決算説明会の動画も配信されています。代表取締役社長が事業の成果について説明しているので、RIZAPグループの雰囲気がわかります。
理念
2016年5月16日の適時開示で発表がありました。
理念は『「人は変われる。」を証明する』ですね。経営目標達成のために策定した理念とのことです。
(3)RIZAPグループ理念の策定
社名変更と同時に、「自己投資産業でグローバルNo.1ブランドとなる。」という経営目標をグループ一丸となって達成するために、RIZAPグループ理念として、『「人は変われる。」を証明する』を新たに策定いたしました。※出典 2016年5月16日 『RIZAPグループ株式会社』体制への移行方針決定に関するお知らせ
経営計画
こちらは2015年2月12日の適時開示で発表がありました。
「COMMIT 2020」という名前の中期経営計画を発表しています。読み方ですが、私は「コミット トゥエンティ トゥエンティ」と読んでいます。
経営目標が「自己投資産業グローバル No.1 ブランド」となることですね。
数値目標が「2020年度 (2021年3月期) 連結売上高 3,000 億円、営業利益 350 億円」です。
2. 中期経営計画「COMMIT 2020」の内容
(1)経営目標
「自己投資産業グローバル No.1 ブランド」となる。
(2)個別戦略
①医療分野への進出
◆高度医療知識と当社ノウハウの融合による新たなサービスの創出
◆医療機関の患者・受診者様に向けた健康サービスの提供
◆健康寿命延伸
②海外への本格進出
◆RIZAPを軸に海外進出を加速
◆北米/欧州/アジア/中東での展開
◆進出地域ブランド認知70%超を目指す
③成長基盤の一層の強化
◆マーケティング戦略強化による顧客基盤の拡大
◆高付加価値化により、生涯にわたって顧客に利用して頂けるサービスを提供
◆経営基盤の継続強化
(3)グループ売上・営業利益の数値目標
■2016年度(2017年3月期) 連結売上高 1,000 億円、 営業利益 100 億円
■2020年度(2021年3月期) 連結売上高 3,000 億円、 営業利益 350 億円※出典 2015年2月12日 RIZAPグループ株式会社 中期経営計画「COMMIT 2020」策定に関するお知らせ
また、理念を引用した資料には以下の記述もありました。目標というよりは手段ですね。
1. 持株会社体制への移行の背景と目的
(1)持株会社体制への移行の理由
(中略)
加えて、持株会社体制への移行により、グループ管理体制を更に強化し、今後のグローバル展開において更なる信用を高めていくために、他市場への上場についても将来的に目指し、個人及び機関投資家を含めたより多くの投資家層の拡大につながるよう取り組んでまいります。※出典 2016年5月16日 『RIZAPグループ株式会社』体制への移行方針決定に関するお知らせ
他市場への上場を将来的に目指す旨の記述があります。今後のグローバル展開のために、そのような手段も視野に入れているようです。
同様の記述は、以下の決算説明会資料にもありました。
2. 2016年度 業績見通し
社名変更の背景
ターゲット市場を『健康』市場から、『自己投資』産業全般まで、業容を拡大することを明確化
(中略)
他市場への上場も視野に入れているため、
認知度・ブランド力の高い「RIZAP」名は有用※出典 2016年5月23日 アナリスト向け決算説明会資料
グラフの見かた
注目ポイント
RIZAPグループは新事業「プライベートジム RIZAP(ライザップ)」を開発してから業績を伸ばしています。
RIZAPの名前が登場したのは、2012年5月29日の「アナリスト向け決算説明会資料」からだと記憶しています。
これは「2012年3月期 決算説明会」の資料ですから、グラフで言うと「FY 2012年3月31日」のあたりになります。
数字の出典
有価証券報告書の数字を使っています。利益率の値や四半期ごとの金額など、計算で求めた数字を使ってグラフを描いているところもあります。
訂正有価証券報告書の内容は反映しておりません。グラフへの感想や説明は、数字訂正前のグラフを見てつけています。
重要と思われたところは、ぜひEDINETや企業のウェブページを参照して、誤りや訂正がないか確認することをお勧めします。
RIZAPグループは訂正有価証券報告書を出しています。特に「2013年5年10日 過年度決算訂正に関するお知らせ」では、広い範囲に訂正がありました。
新しい有価証券報告書に載っている過去の数字は訂正済みなので、それとグラフを見比べると一致しないところがあります。
株式分割など、業績以外の数字については企業が開示しているIR資料などを参考にしてグラフに載せています。
略称など
横軸の日付は、各決算の会計期間の終了日です。Q1、Q2、Q3は、それぞれ第1四半期、第2四半期、第3四半期です。FYは通期です。
折れ線が途切れているのは、会計基準が変わったためです。
凡例の名前は、スペースの都合で短くしている場合があります。
株式分割の日付は、権利落ち日の日付で表示しています。
非連結とは、会社本体のことです。子会社を含まない状態です。ほかにも「個別」とか「単体」とか「本体」という呼び方があります。
特に断りがなければ、連結の金額です。
業績の推移
売上と利益(同スケール表示)
こちらは売上と利益の規模を比べたくて作ったグラフです。
このままでは利益が見づらいので、スケールを分けて表示します。
売上と利益
売上は200億円から1000億円近くにまで大きくなっています。IFRS営業利益は100億円に達しています。
売上高利益率
純利益率=(純利益/売上高)×100 [%]
IFRSの利益率も同様に、各利益を売上収益で割って求めています。
決算説明会資料によると、Q1に広告宣伝費を使い、FYにかけて減らしていくビジネスモデルとのことです。
2017年8月9日の決算説明会資料でもQ1集中投資をしているとのことですが、最近はQ1の利益率のマイナスがありません。
RIZAP関連事業の好調や、M&Aで加わった子会社たちの経営再建が進んでいるとのことで、これらが要因のようです。
四半期ごとの売上と利益
具体的には次のように計算しています。
Q1:Q1累計期間 | Q2:Q2累計期間ーQ1累計期間 |
Q3:Q3累計期間ーQ2累計期間 | FY:FY累計期間ーQ3累計期間 |
2011年から2015年のあたりは、Q1の利益よりFYの利益が大きいという傾向があります。
全体的には売上も利益も成長を続けています。
キャッシュフロー
どのキャッシュフローも金額の桁が大きくなっています。事業規模の拡大が伝わってきます。
特に財務キャッシュフローの大きさが目立ちます。それぞれの有価証券報告書によると、長期借り入れの増加によるものとのことです。
利率ですが、「長期借入金(1年内返済予定を除く)」の平均利率は1.23%です。
平均利率は「2017年6月26日 有価証券報告書 第14期」の「連結財務諸表注記 有利子負債」から。グラフで言うと、FY 2017年3月のところの報告書です。
この借り入れにより、現金及び現金同等物が増加傾向です。
利益と営業キャッシュフロー
一般に、営業CFが利益を上回っていれば良いと見るようです。グラフで言うと、Q1 2009年6月からFY 2010年3月のあたりが理想的ですね。営業利益(日本基準)や純利益などと比較する場合もあります。
最近を見ると、Q3 2016年12月の営業CFのマイナスが大きいです。有価証券報告書を見ます。おもな要因は
- グループ会社での期末に向けた在庫積み増しによる「棚卸資産」の増加。
- Q3の期末が金融機関休日で、営業債権の入金が翌月になったことによる「営業債権及びその他の債権」の増加。
とのことです。マイナスが大きかったためか、理由が特に詳しく書かれていました。
先のグラフで「現金及び現金同等物」が増加傾向にあったので、資金繰りの苦しさは感じません。
資産と自己資本比率
資産も純資産も大きくなっています。自己資本比率は15%から25%くらいで推移しています。自己資本比率は低いという印象を受けます。
2014年3月期の決算説明会資料では、自己資本比率30%を目指すとありました。
それ以降では、2016年3月期の決算説明会資料に「グループ企業数の増加を見据え、財務の健全性を維持していく」という記述がありました。
全体的な事業の好調とM&Aの成果を勘案して、自己資本比率の向上よりも事業の拡大を選んだ、という印象を受けます。
純資産と自己資本利益率
FY 2010年3月、FY 2014年3月、FY 2017年3月に自己資本利益率のピークがあります。
それぞれの決算説明会資料を見るとわかるのですが、過去最高という文字が特に強調されていました。
流動資産と流動比率
流動資産は1年以内に現金で回収される資産です。
流動負債は1年以内に現金で支払う負債です。
流動比率がQ1 2014年6月から再び大きくなっています。
「営業CFのマイナス」と「自己資本比率の低さ」が気になっていましたが、この「流動比率の推移」と「現金及び現金同等物の推移」から、資金繰りに問題はなさそうだと感じました。
株主資本と四半期ごとの利益
それぞれの剰余金は、準備金なども含めた合計金額です。
このグラフは「株主に還元できる利益がどのくらいあるのか」が知りたくて作りました。
グラフを見ると、四半期ごとの純利益が増加傾向で利益剰余金の増加が速くなっています。
株主資本と利益 (非連結)
FY 2012年3月とFY 2014年3月の純利益で、利益剰余金が増えています。
しかし、FY 2017年3月は純利益がマイナスでない(+2036万円)のに、利益剰余金が10億円近く減っています。
これは、剰余金の配当9億6851万3千円の支払いがあったためです。
2017年6月26日の「有価証券報告書 第14期」にある「当事業年度 株主資本等変動計算書」に計算が載っていました。
- 利益剰余金 当期首残高 50億5470万3千円
- 剰余金の配当 △9億6851万3千円
- 当期純利益 2036万円
- 利益剰余金 当期末残高 41億655万円
なお、基準日がFY 2017年3月に属する配当金に15億4197万5千円がありますが、これは効力発生日が翌年度に属します。なので、ここでの利益剰余金の計算には入っていません。
株主への利益還元は配当金が基本です。
実際に配当金で還元できる金額は、非連結の利益剰余金の金額までだったと記憶しています。そこで、この非連結のグラフを作りました。
利益剰余金の金額はすべてが現金というわけではなく、売掛金などの流動資産や土地・建物といった固定資産として存在している部分があります。
なので、利益剰余金の中から事業に支障をきたさない範囲で、それらの資産を現金にしてから配当金を出すようです。
例外的ですが、資本剰余金の金額から配当金を出すことも認められているようです。
配当総額と配当性向
連結配当性向のグラフです。「株主への利益還元の積極性」を見るために作りました。
有価証券報告書には非連結の数値しかなかったので、計算してグラフを作りました。決算短信の最初のページにある「配当性向(連結)」の金額とほぼ一致していると思います。
配当総額が年々大きくなっており、連結配当性向も増加傾向です。
FY 2016年3月の配当性向が大きくなっています。これは、上場10周年を記念した特別配当が上乗せされていたためです。
平成28年3月期の期末配当につきましては、上記配当方針に基づく通常配当に、上場10周年を記念した連結配当性向20%の特別配当を加えた1株当たり7円60銭(年間配当性向39.3%)とさせていただきます。
※出典 2016年5月16日 剰余金の配当に関するお知らせ
通常の連結配当性向は「18%~20%」です。その前の連結配当性向は「8%~10%」でした。これらの数字は 2014年5月23日の「配当方針の変更に関するお知らせ」で開示されていました。
1.配当方針の変更
当社は、連結業績に応じた利益配分の水準を明確にするため、平成22年8月10日の取締役会において、連結当期純利益の8~10%を配当性向の目処とする配当方針を決議しておりました。
(中略)
より経営成績に応じた業績連動型利益配分(高い成長と高い配当)を目指し、連結配当性向を現状より倍増させた18%~20%を目処とする配当方針を決議いたしました。※ 出典 2014年5月23日 配当方針の変更に関するお知らせ
グラフを見ると、確かにそのような配当性向の実績になっています。
配当総額と配当性向 (非連結)
こちらは非連結の配当性向のグラフです。FY 2016年3月に配当性向が100%を超えているのは、先の通り特別配当が上乗せされていたためです。
こちらも配当性向は増加傾向です。
先の連結配当性向の推移とこの非連結の配当性向のグラフを見て、株主への利益還元に積極的であるという印象を受けました。
また、2015年2月12日の「RIZAPグループ株式会社 中期経営計画「COMMIT 2020」策定に関するお知らせ」では、2021年度の連結配当性向を30%にすると目標を掲げています。これも、利益還元に積極的であるという印象を与えている情報のひとつです。
直近(FY 2017年3月)の非連結 純利益が小さいので、ここはFY 2018年3月の有価証券報告書が開示されたときに確認したいところです。
以下注釈です。
純利益と配当総額を見るに、実際はもっと大きいと思います。
配当性向=(配当総額/非連結 純利益)×100 [%]
=(15億4197万5千円/2036万円)×100
≒7573.55 %
従業員数と平均臨時雇用者数
従業員数が大幅に増加しています。これはM&Aで子会社が増えたためですね。2012年5月29日の決算説明会資料にそのような記述がありました。
その後も積極的なM&Aで従業員が増え続けています。事業規模の拡大が伝わってきます。
また、「2017年10月1日付けで、ボディメイク店舗勤務のトレーナーとカウンセラー約1000名を正社員雇用に切り替える」との発表もありました(2017年8月9日 アナリスト向け決算説明会資料)。
従業員に関する費用が気になりますが、2011年2月25日の決算説明会資料までは「固定費となる従業員数はできるだけ抑制」という旨の記述がたびたび登場していました。
また、代表取締役社長も変わっていないので、従業員に関する費用には引き続き注意を払っているのだろうと思っています。
発行済株式数と大株主所有割合
大株主の所有割合が FY 2015年3月から Q2 2015年9月にかけて減っています。
それぞれの有価証券報告書によると、一番大きな所有割合の減少は次のとおりでした。
代表取締役社長 2702万9400株 (43.76%) → 3751万4000株 (29.44%)
この減少の理由ですが、はっきりと書かれている資料が見つかりませんでした。
ただ、減少があった時期に「株式の立会外分売」と「新株予約権の行使」がありました。
株式の立会外分売終了に関するお知らせ
(中略)
分売実施日 株数 分売値段 上限株数 平成27年3月31日(火) 3,080,000 株 1,279 円 100,000 株 (中略)
実施の目的 当社株式は市場に流通する浮動株式の割合が9%程度と非常に小さいため、これを改善するものです。※出典 2015年3月31日 株式の立会外分売終了に関するお知らせ
株式の立会外分売終了に関するお知らせ
(中略)
分売実施日 株数 分売値段 上限株数 平成27年6月4日(木) 6,160,000 株 795 円 500,000 株 (中略)
実施の目的 当社株式は市場に流通する浮動株式の割合が14%程度と非常に小さいため、これを改善するものです。※出典 2015年6月4日 株式の立会外分売終了に関するお知らせ
新株予約権の行使による株式数の増加は、2015年8月14日の四半期報告書にありました。
新株予約権の行使による発行済株式総数の増加
平成27年4月1日~平成27年4月30日 +24万5千株
(平成27年5月1日 株式2分割 +6201万3千株)
平成27年5月1日~平成27年6月30日 +341万株※ 出典 2015年8月14日 四半期報告書 第13期 第1四半期「発行済株式総数、資本金等の推移」から抜粋して加工しました。
これらは、2015年3月2日の「第三者割当による第1回新株予約権(行使価額修正選択権付、行使許可条項付)の行使許可に関するお知らせ」に関係する分だと思います。
この時期は株式分割をはさみながら分売や新株予約権の行使があるなど、開示資料が入り組んでいて、全部は追いきれませんでした。
おそらくですが、これらが所有割合減少の理由なのだろうと思っています。
まとめ
ライザップグループは高い数値目標に向かって実績を示し続けています。まずは COMMIT 2020 の目標通過に向けて成長を続けていくのだろうと思います。
ご覧くださりありがとうございます
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